おそらく、あなたも、特許権や意匠権、商標権をとりたいと思ったとき、あるいは、それらについて専門家に相談したいとき、どの弁理士(特許事務所)に依頼するのがよいか、迷っておられることでしょう。

そこで、当所が、依頼する弁理士(特許事務所)の決め方(の一例)をお教えしましょう。

1.費用(弁理士報酬)の観点から

(1)まず、費用(弁理士報酬)の観点からお話ししますね。


(2)一般に、特許明細書(図面を含む)に必要な情報やその量について熟知している大企業は、知的財産権の実務に習熟した社員を抱えていますし、発明者となる自社の技術者にも研修を行っていますので、弁理士(特許事務所)に依頼が来るときに提出される資料(発明提案書)には、ほぼ間違いなく、特許明細書(図面を含む)に必要な情報(発明の内容、概略図、従来技術の文献情報など)がほとんど記載されています。もちろん、例外はありますが。

従って、依頼を受けた弁理士(特許事務所)が、特許明細書(図面を含む)を作成するのに必要な情報の入手や検討、特許されるべき発明の把握に要する時間は少なくて済みます。

このため、依頼を受けた弁理士(特許事務所)に支払われる費用は、業界で一般的に言われている金額(おそらく30万円~45万円くらい)よりかなり低く抑えられています。これは当然でしょう。


(3)しかし、中小企業やベンチャー企業には、通常、上述したような知的財産権の実務に習熟した社員はいませんし、発明者となる自社の技術者にも上述したような研修を行っていませんから、弁理士(特許事務所)に依頼が来るときに提出される資料は、発明を具体化した試作品やその図面(と実験データ)だけ、といった場合が多いです。

試作品そのものやその図面さえも提出されない、つまり、提出される資料が全くない場合も多いです。

その場合は、弁理士が発明者と面談し、発明者に自身の発明についてホワイトボードを使って説明していただきます。また、その場で適宜、質疑応答を行って、必要な情報をできるだけ入手するようにします。

そうすると、依頼を受けた弁理士(特許事務所)は、特許明細書(図面を含む)の作成に着手する前に、不足している情報を入手し、それらについて検討しなければなりません。

具体的には、
 (a)発明の従来技術になる文献情報の入手とその検討、
 (b)発明者に対する質疑応答やウェブサイト検索による、発明に関連する情報の追加入手とその検討、
 (c)(a)及び(b)の結果に基づき、特許されるべき発明(請求項に記載する発明)の把握、
 (d)(c)の結果に基づき、必要な図面の検討とその作成、
といった作業に、多大の時間が必要になります。

以上述べた理由により、中小企業やベンチャー企業から特許出願の依頼を受けた弁理士(特許事務所)が同企業に請求する金額は、上述したような大企業の場合よりもかなり高くなるのが通常です。これは当然ではないでしょうか。

上述した「業界で一般的に言われている金額、すなわち、30万円~45万円くらい」というのは、弁理士(特許事務所)が中小企業やベンチャー企業から特許出願の依頼を受けた場合の金額です。


(4)当所は、特許出願を弁理士(特許事務所)が代理する場合の費用(弁理士報酬)の相場(消費税抜き)は、難易度や分量(総ページ数)によってかなり変わりますが、おそらく30万円~45万円くらいだろうと推測しています(弊所はそのようになっています)が、これは上記(3)で述べた理由によるのです。

従って、その相場の金額を大きく下回る費用をうたっている弁理士(特許事務所)、例えば、10万円台を提示しているような、価格勝負の弁理士(特許事務所)はお勧めしません。

そのような低い金額であなたの望む品質(レベル)の特許明細書(図面を含む)を作成して特許庁に提出する、というのは、そのような特許明細書(図面を含む)を作成するのに要する手間と時間を熟知している当所からすれば、無理があると思われるからです。

ダンピング(採算を無視した低価格で商品を投げ売りする)をしているとしか思えません。

価格勝負の弁理士(特許事務所)は、低額で受任するのですから、低額で納めるための条件が必ず付いています。

その条件を満たさなければ、追加費用が必要となり、結果として、高品質(高レベル)の特許明細書(図面を含む)を期待できないのに、上述した相場の金額との差は小さくなってしまいます。


(5)当所は、30万円~45万円くらいという相場の金額は、特許明細書(図面を含む)を作成するには通常、数十時間を要することを考えれば、リーズナブルだと思います。

タイムチャージで換算してみてください。

30時間で完了して30万円を請求するとして、時給は1万円、30時間で完成して40万円を請求するとして、ようやく時給1.6万円になります。

時給1万円というのは、国家資格と豊富な実務経験を持つプロフェッショナルの報酬としては、低すぎると思います。

時給1万円の中には、特許明細書(図面を含む)作成という作業(上述した(a)~(d))に直接的に要した費用だけでなく、事務連絡(出願報告書の送付等)に要する費用等の直接的に関係する費用のほか、法的・技術的な専門知識と技能(スキル)のアップデートに要する費用、事務所の家賃等の固定費や人件費(事務所の維持費)も含まれるからです。

時給1万円(あるいはそれ以下)では、賃貸で特許事務所を開設・維持するのは大変でしょう。

当所の場合、振り返ってみると、案件によっては時給1万円(あるいはそれ以下)と算出されることがありました。

が、それは、例えば、発明に関する技術の知識不足を補うために、発明に関連する特許公報を調査して読み込んだり専門書を買って勉強したりした時間が含まれるからであって、その時間を除くと、許容範囲に収まっているように思います。

あなたが特許出願や実用新案・意匠・商標の登録出願を依頼する弁理士(特許事務所)を選定される際には、以上述べたことを参考にしていただき、あなたの予算と弁理士(特許事務所)に期待する質(レベル)とを比較考量されると、選定の間違いが生じにくくなると思います。

2.依頼した案件の取り扱いの観点から

(1)次は、依頼した案件の取り扱いの観点からのお話です。


(2)多数(例えば10人以上)の弁理士が在籍する大規模事務所にするか、弁理士が1人または数人の小規模事務所にするかですが、あなたが個人事業主あるいは中小企業やベンチャー企業の経営者であるなら、小規模事務所をお勧めします。

小規模事務所の場合は、その実績を踏まえて検討する必要はありますが・・・・。

その理由は、大規模事務所では、依頼件数の多い大企業を主要な顧客として抱えているために、通常は、大企業から依頼された案件が優先され、それ以外の案件は後回しになりがちだからです。

さらに、大規模事務所の場合、優秀な弁理士は主要顧客である大企業の案件に回され、あなたが依頼する案件には優秀な弁理士が回されない可能性が大だからでもあります。

その点で、業界で名の通った(著名な)大規模事務所に依頼しさえすれば、あなたが希望する仕事の質が担保される、という考えは、必ずしも正しくないのです。

これは、当所も、開業して間がないころに大企業からの依頼を受けるようになり、上記のような状況に追い込まれた経験があるから、他の事務所でも同様でしょう。これは、ほぼ間違いないと言ってよいと思います。

大規模事務所であっても、余剰人員を抱えているわけではないため、事務所の限られたマンパワーで受任したすべての案件を納期を守って仕上げるには、どうしても案件の依頼者に優先順位をつけざるを得ないのです。


(3)また、これは、「1.費用(弁理士報酬)の観点から」の部分で述べた方がよいかもしれませんが、大規模事務所の場合、私の目から見て請求される費用が「割高だな」と思われることがあります。

これは、大規模事務所では、弁理士以外に、売り上げに寄与しない事務員(や売り上げに対する貢献度が低い弁理士)をかなりの数、雇用しているからではないでしょうか。

そのために、どうしても事務所のいわゆる間接費用が高くなってしまうからではないか、と推測されます。(あくまで推測です。)

しかし、大規模事務所に強いコネがあるというような例外的な場合は、大規模事務所がいいでしょう。

あなたからの依頼(仕事)を優先的に取り扱ってくれることが期待されるため、上述したような大規模事務所の難点が生じないと予想されるからです。

ベンチャー企業や中小企業でも、依頼する仕事の件数(頻度)が多い(例えば毎月、少なくとも1件の特許出願を依頼する)と見込まれるような例外的な場合は、マンパワーに余裕があり、組織が整っている大規模事務所の方が安心できそうです。


(4)以上述べた点に留意して検討されれば、弁理士(特許事務所)の選択肢は自ずと絞られてくるでしょう。

3.むすび

以上述べたことは、あくまで当所の個人的な見解ですが、依頼する弁理士(特許事務所)を決める際のご参考にしていただければ、と思います。

この記事が、少しでもあなたのお役に立ちましたら、うれしいです。

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